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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第31回
「こういうものは作ってはいけない」
(2003年2月16日UP)

今回は物作りを職業としている人、あるいは趣味でもお金をとって販売をしている人、これからしようと思っている人に、私の考えを聞いていただきたいと思います。

といいましても、何もそれほどむずかしいことを書こうというわけではありませんし、書けと言われても書けません(笑) ようするに商売というのはどういうものなのか、ということですね。
商売は商品とお金を交換することです。 当たり前だ。 ですがこの当たり前のことを皮膚感覚になるまで
理解し、日々実践していくのは意外とむずかしいことなのですよ。

人間は誰しも自分本位ですから(もちろん私もそうです)、作ることに夢中になり、客観性を失ってしまいがちです。
自分のための趣味であればそれでいいのですが、売ろうとするのであれば、それはちょっとまずいのですよ。 やっぱりある程度自分と作品を、客観的に見ていなくてはいけないのです。
なんのためでしょう? それはお客様のためです。 赤の他人になぜそこまで気をつかわなくてはいけないのか、それはお金をいただくからです。
実に単純なことです。 ですがこれを頭ではなく、心で理解するのはなかなかむずかしいことなのですね。 と、言われてもおそらくはピンとこないと思いますが。 「そうだなぁ、そうなんだよなぁ」と思われた方は、これまでに客観的になることの大切さを、イヤというほど痛感してきた方だと思います。
「商売ってむずかしいねぇ」とよく言います。 それなんですよ。

くどいようですが、趣味なら、また儲ける気がないのであれば、どんなものを作ってもいいんです。 しかしそれで生活をしていこうというのでしたら、自分の作るものを、お客様の身になって客観的に判断できなくてはいけないのです。
そしてもし自分の作るものがお客様の感覚とずれていたら、それを認めお客様に合わせる勇気を持つことです。

「それじゃー個性がなくなってしまうじゃないか!」、そう言われるかと思います。 実にそのとおりです。 完全にお客様に迎合してしまっては、自分を失うことになりますから、そのバランスが大切なんですよ。
どこまで自分を出し、どこまでお客様方の好みを取り入れるか、その見極めがむずかしいのですね。 どこまで取り入れたらいいのでしょう。 それは・・・・・私にもよくわかりません。 それがわかっていたら、もっとたくさんの作品を作ることができたと思います。 私も誰かに教えてもらいたいくらいですが、おそらくそれはだれにもわからないことなんでしょうね。 むずかしいもんです。

自分が 「こういうものが好きだ」 と思って作ったものが、世の中に受け入れられないと人は焦ります。
売れなくっても全然平気、というお金持ちは別でしょうが、たいていの人は行き詰まったり、悩んだり、何を作ったらいいのかわからなくなったり、自信を失ったりします。
ここで自分を客観的に見ることが大切になってくるんです。 それができない人は、なぜ売れないのかがわかりません。 つまりお客様のニーズに応えられていない、ということがわからないんです。
こういう人の多くは 「アート」 「芸術」にはしります。 なんのことでしょう? つまり 「これはアートだから、芸術だから一般の人にはわかりにくいんだ」、という逃げを打つわけです。
日本人は 「アート」 「芸術」という言葉に弱いですからね。 それだけで変に恐れ入ったり、ありがたがったり、卑屈になったりします。 なぜならまじめだから、それを頭で理解しようとしてしまうんですね。
芸術は頭で理解するものではなく、感性で受けとめるものなのですが、悲しいかな幼い頃からそういった訓練を受けていないのですよ、日本人という民族は。

ようするにそういった 「弱み」に付け入ろうとするわけですね。 それで逆に大げさに奇をてらったものを作ったりするようになります。 そんなことが世の中で通用するわけがありません。 「世の中のやつらは何もわかっちゃいない!」と言って消えていくんです。
仮にうまく 「弱み」に付け入ることができたとしても、今度はそれを維持するために、言葉でごまかそうとするようになります。
よく自称 「芸術家」なる人が、なにやらへんてこなもの、奇をてらったものを作って、「これは○○を表現している」とか言ってるのを見ますよね? あれですよ。
何も表現なんかしなくていいんです。 ただ人が見て美しいと思うもの、かわいいと思うものを素直に作ればそれでいいんですよ。
言葉で逃げる、言葉に逃げることは絶対にいけません。 なぜなら私たちは物を作る人であり、見世物師ではないんですから。

作るものに自信のない人は、口で相手をごまかそうとします。 流行りの英単語を羅列しただけの、意味不明のことをべらべらとしゃべる人がいますが、そういう人はいつか化けの皮がはがれる時が来るものです。
ですから苦しくても、つらくても、どうしていいかわからなくなっても、決して楽な方に逃げてはいけませんよ。 一度逃げるとなかなか元に戻ることはできなくなりますからね。

とにかく素直な気持ちで、初心を忘れずに、そしていつも客観的に自分を見る習慣をつけることです。 そして「心地のいいもの」を作ること、不安にさせるようなアンバランスなデザインのものは作らないこと。
人を驚かせることなんて必要ありません。 気をひこうとしてはいけません。 そうした気持ちがあると、つい奇をてらいたくなってしまうのです。 鼻や口が目より上にある、あみぐるみのクマを作ってしまったりね。
素直が一番です。 でもそれがむずかしいんですよねぇ・・・・

最後にもう一度言いますよ。 あなたは絶対に 「アートだから」「芸術だから」、などと言う人にはならないで、お客様を心地よくさせるものを作ってくださいね!!!