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雑貨人生20数年の想い出、感じたこと、創作を愛する人へのエール といった感じのエッセイです。
雑貨屋KUMAのエッセイ 「雑貨想い出帖」 バックナンバー

   Vol,14〜Vol,59

(14以前は保存してありません)


第46回
「私のつたない才能が枯渇する時」
(2003年10月1日UP)

人間の感性には限界があります。 それはどんなに偉大な人でも同じでしょう。 そういつまでもいい作品を作り続けられるものではありません。 おそらくどんな業種でもそうでしょう。 いつかは作る物が世の中に受け入れられなくなる時が来るのです。 まして私のように才能に恵まれない作家は、その限界点が早くやってくるのはしょうがありません。
物作りは生涯続けるかもしれません。 しかしレジンで作品を作るには、年齢的な上限があるように感じています。 趣味でならいいのですが、商売としてはできなくなる、ということですね。 つまり売れる作品が作れなくなるわけですよ。

最近作品を作る素材に、扱える年齢の違いがあることを感じます。 自然素材は永く扱えますが、レジンのような人工素材は、やはり若い感性が必要だと思うのですね。 そういった意味で、今年2003年で39歳になった私には、そろそろ限界がやってきそうな雰囲気です。
まわりからどう見えるかはわかりませんが、自分自身だんだんレジンで作品を作ることが、つらくなってきているのは事実です。
もちろんまだまだ作りたいデザインはたくさんありますから、すぐにというわけではありませんが、長くてもあと5年くらいだと思っています。 それ以降は生まれるデザインがレジンに、そしてお客様の好みに合わなくなっていくと考えています。

レジンを扱うのを完全にやめて、他の素材で物作りを始めるようになるのか、あるいはレジンと他の素材を合わせて作品を作るのかはわかりませんが、今と同じスタイルで作品作りができないことには間違いないでしょうね。
私の性格からいって、物作りは一生涯やめられそうにありません。 おそらくまた何か始めるでしょうし、今現在やりたいこともあるんですよ。
ですからレジンで作品が作れなくなることには未練はありません。 もともとレジンが好きで扱い始めたわけでなく、生活するためには量産する必要があり、それにレジンが向いていただけですからね。
物作りの素材はレジンだけではありませんし、インテリア雑貨だけでもありません。 以前から言っていますとおり、人の手から生まれる物であれば、野菜であれ花であれ、料理であれなんであれ、それはすべて「手作り」なわけですから、なんでもいいんですよ、私は。

しかしこれまで蓄積してきたレジン成型の知識を、このまま捨ててしまうのは惜しいと思っていますから、レジンでの作品作りができなくなったら、今度は教える立場になることも考えています。
運命とはおもしろいもので、最近そうしたお話がよく来るようになりましたし、順調にいけば2004年から講師をするでしょう。
私は人と接するのが好きですから、正直に言えばつらい思いをして作品を作るよりも、生徒さんたちに教えている方が楽だし、楽しいだろうなぁと思います。 思いますが、今はまだ作りたいデザインがありますから、ころっと切り替える気にはなれませんね。 と言いますか、最近ようやくレジンの性質をほぼ完全に理解しましたし、技術的にもどんなことでもできる腕になりましたから、17年かかってやっとスタート地点に立ったという気持ちもあるんです。
スタート地点に立ったら、もうゴールが目の前に見えた、そんな感じですよ(笑)

私がレジンで作品を作り始めた時、同じことをしている人は他には誰もいませんでした。 ですからだれにも聞くことができず、レジンの性質や作業方法、なぜ失敗したのか、きれいに成型するにはどうしたらいいのかを、ひとつひとつ自分で経験し、修得するしかありませんでしたから、レジンを完全に理解するのに、17年もかかってしまったのですね。
私は考えます。 もし私がレジン成型を人に教えれば、その人は時間の節約ができ、感性が豊かなうちに技術を身に付ければ、レジン成型の世界はもっともっと素晴らしいものになるんじゃないかな。
レジンで作品を作ることが一般に広まれば底辺も広がり、当然レベルも向上するでしょう。 そうすれば私の作品などは、古典的な古い技術と言われるようになるでしょうね。 いや、ぜひそうなって欲しいと思っています。

これまでにも書きましたが、芸大や美大、デザイン学校を出ても就職はできませんし、習った技術で食べていくこともむずかしいのが現状です。
一点物の「芸術」では食べていけませんが、レジンで量産すれば生活はできるのです。 もちろんみんなが、ではありませんが、少なくとも絵やオブジェよりは可能性は高いですよ。
私はこれまでに、たくさんの若い人が創作で食べられずに、消えていくのを見ました。 それがかわいそうで、もったいなくてしょうがないのです。
高い学費を払ってそれで食べていけないなんて、そんなのは絶対におかしいですよ。 デザインが悪いならしょうがありませんが、才能がありながら消えざるを得ない、そんな今の状況が我慢できないんです。

もし私の技術や知識がそうした人たちの創作に役に立ったら、それが私の使命ではないか、最近よくそう考えるようになりました。
おそらく今後レジンでの作品作りはもっと身近になるでしょう。 それはまず間違いのないことだと思います。 そしていつの日にか、レジン成型が創作のひとつのジャンルとして確立し、レジン成型で自分を表現し、生活ができるようになるといいですよね。 そうなってくれれば、これまで私がしてきた苦労は無駄ではなかったわけですから。

技術の伝承、というほどのことではありませんが、それが私の第二の人生の、柱になることはほぼ間違いないでしょう。
でもこの私という人間はそれだけでは満足できないんですねぇ。 職業がひとつじゃつまらないですねぇ。 ですからこれからはやりたいことは何でもやります。 もうすでにやり始めていますが、野菜作りももっと本格的にやりたいですし、自分で作った野菜を加工して売るのも楽しいでしょう。 さらに調理師学校に通って資格を取り、ベーコンやハムなどの燻製もネットで売りたいとも思っていますよ。
とにかく「作る」ことが大好きなんですね。 もうまるで中毒ですよ(笑) 物作りをやめた時が死ぬ時なんじゃないかな。 本気でそう思うほど作るのが好きなんです。 幸せ者だと思いますね、私は。