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雑貨屋KUMAの田舎暮らしエッセイ 「東丹沢山ごよみ」 バックナンバー

  第1回
 「田舎暮らしをはじめて14年」

  第2回
 「私の住む集落を紹介しましょう」

  第3回
 「山歩きと日本の山林の現状」

  第4回
 「私の山の楽しみ方」

  第5回
 「山野草と山菜 春のよろこび」

  第6回
 「春から初夏の山」

  第7回
 「幻想的な梅雨時の山、そして夏へ」


  第8回
 「秋の山野草と山の生き物たち」




第7回
「幻想的な梅雨時の山、そして夏へ」
(2012年8月1日UP)

この 「東丹沢 山ごよみ」 では、神奈川県西部の山の中腹にある歴史の古い集落で、2012年12月までの約15年間、家族とともに田舎暮らしを楽しんだ私の日常や、山で見られる美しい花や風景をご紹介しています。



もちろん今の季節は、一般的にアウトドアシーズンということになっていますから、ドライブやキャンプ、バーベキューなどを楽しまれる方も多くいらっしゃいます。

自然が好きな私としましては、こうして山に遊びにいらっしゃる方が増えるというのは、とてもいいことだと思うわけですよ。 とくにお子さんのいらっしゃるご家庭では、自然の中でお子さんを遊ばせるという体験は、心身の成長にとてもプラスとなりますからね。




 


山の表情は一瞬一瞬で変わっていきます。 さっきまでずっと先まで見通せていたのに、あっという間に真っ白な霧におおわれて10メートル先も見えなくなったり、雨がぱらぱら降ってきたと思ったら青空が広がって、思いもかけず美しい虹を見ることもあります。


今回はそんな梅雨時から夏にかけて咲く山の花をご覧いただきましょう。


年々、山に遊びに来る方がとても増えています。 10年以上前から始まった「中高年の山歩き」はすっかり定着し、最近では「山ガール」もよく見かけるようになり、またここ数年の自転車人気がいよいよブームのような感じになってきていまして、私の住んでいる山周辺は、関東の自転車乗りの方々のメッカにようになっているところですから、土日と言わず、平日でも朝早くから大勢の方が、汗を流しながら急な坂を上っていきます。


 
 


ただやっぱり梅雨時は人が少なくなります。 それはそうですよね、雨が降っている中で遊ぼうなどという方は少ないですからね。 まぁ 少数ですがいらっしゃることはいらっしゃいますが。

でも梅雨時の霧にけむる山の風情や、ぬれそぼる木々の美しさには言うに言えない情緒があるもので、こうした景色を味わえるのは、山に住んでいる者の特権の一つかな、そう思ったりもしています。


 



初夏から夏へと移ろう季節の山を彩るのは、いろんな種類のウツギです。 葉っぱにそれほど特徴のない木ですから、普段はそれほどその存在を気にすることはありませんが、花が咲きますと、「こんなにウツギがたくさんあったんだ!」 とおどろくほど、いたるところウツギだらけです。

→ 右の画像はハコネウツギ。 白とピンクの花が混在していますね。 咲いたときは白いのですが、それが日ごとに少しずつピンク色になっていくのですよ。 ですからピンク色の花は先に開花した花で、白い花が咲いたばかりの花、というわけなのです。

開花後に徐々にアントシアニン色素が増えていくのでしょうかね。 よくわかりませんが、この色の変化はとても美しく、目を楽しませてくれます。
わりと花期が長いのもうれしいですね。

色の変化が美しいハコネウツギ



一時期しか見ることができないアサギマダラ
初夏から梅雨時になりますと、どこからともなくアサギマダラというチョウがやってきます。 画像はウツギの花の蜜を吸っているアサギマダラですが、美しいでしょ?

このアサギマダラというチョウは変わっていて、「渡り」 をするのですよ。 時には2000キロ以上も旅をすることがわかっていて、民間団体やマニアがその飛来コースを調べています。
このチョウの羽には鱗粉がありませんから、マーカーで日付やナンバーなどを書いて離し、渡りをした先で誰かが見つけてくれるのを待ちます。
アサギマダラを捕獲して羽にナンバリングがしてあったら、そうした団体のサイトに連絡をする、というシステムで調査がなされているのですよ。 おもしろいでしょ。

残念ながら私はまだナンバリングされた個体を見つけたことはありませんが、このチョウがいったい何百キロ離れた土地から飛んできたのだろうか?と思うだけでロマンがあります。


ウツギと同じ時期に咲くのがノイバラの花。
ブログにも書きましたが、ノイバラは 「野のイバラ」 で、イバラとはトゲのあるやっかいな植物、というような意味あいでしょう、それがいつの頃からか、「イ」の字が抜けて野バラとなり、この植物の花の名前になったんですね。 つまりバラの原種です。

ほかの地域のことはわかりませんが、このあたりのノイバラはすべて白花です。 それもかなり個体差があって、小さい花の株もありますが、5センチくらいの花を咲かせる株もあります。
小さい花は早くしおれてしまいますが、大きな花は少し長く咲きますから、画像のように満開の風情を楽しむことができるわけですね。

昔はこんなふうにノイバラがからまった垣根をよく見たように思いますが、そういえば最近は見ないなぁ。

とてもいい香りのするノイバラ



街路樹にはないしっとりとした美しさがあるヤマボウシ
このヤマボウシの花はこのあたりの山ではあまり見ることができないので (そりゃスギやヒノキの植林地ばかりですからね)、「見に行く」 という感じで気合を入れて見に行きます。 この時期に山を歩く一番の目的かもしれません。

公園や街路樹で植えられた木はよく見ますね。 そういう木は花をたくさんつけますが、山に自生している木はあまり花をつけません。 それだけに貴重な感じがします。

まるで真っ白な絹のハンカチを広げたような風情が、なんとも言えず美しいですね。 このシンプルな緑と白のコントラストの美しさがなんとも言えないじゃないですか。


花の中心の緑色の実が、秋になると真っ赤に色づいて食用となりますが、残念ながら私はまだ一度も食べたことがありません・・・


このトリアシショウマは、特に目立つ花ではありませんが、梅雨の山にはあってほしい花ですね。 なにに惹かれるのか自分でもわかりませんが、言うに言えない可憐な風情がいいですね。

トリアシは鳥足で、春先に地面からにゅ〜〜って芽を出した姿が、鳥の足のように見えるので、こうした名前が付けられています。 山菜にもなるんですよ。

こういう集合した小さな花を間近でよくよく見てみますとね、それはどんな植物でも同じですが、これが非常に美しいのですよ。
なんと言いますか、しっとりとした冷たい小さな花火がまたたいている、といった感じで、かわいらしくも美しいのです。
じっと見ていますとね、次から次から小さな虫が蜜を吸いに来て、これまたおもしろくてつい見入ってしまうわけですね。

トリアシショウマ
名前はヘンだけど花は美しい



なぜ葉っぱが白くなるのか不思議
星形のかわいらしい花がたくさん咲いている、ように見えますが、これは花ではなく、花が終わったあとのガクと、生りはじめたマタタビの実です。

マタタビは初夏になりますと、葉っぱが白く変色するのですぐにわかります。 画面で葉っぱが白っぽく見えるのは、テカッているのではなくて実際に白いのですよ。 不思議ですよねぇ。

マタタビは 「また旅」 という意味で、マタタビの実の多くは虫が寄生して虫こぶになります。 その虫こぶになった実をお酒に漬けたり、塩漬けにしたりしますと、滋養強壮薬となるんですね。
疲れた旅人もこれを食べると元気が出て、また旅ができるという意味だそうです。 おもしろいですよね。

私も以前あやかって焼酎漬けにしてみましたが、まずくてダメでした(笑)


梅雨明けが近づいてきますと、ホタルブクロの花が咲き始めます。 私はこの植物をなぜ園芸店で販売しないのかが不思議でなりません。 見ておわかりのとおり美しい花ですし、育てるのも実に簡単、殖やすのもとても簡単なんですよ。

ホタルブクロは昔の言葉で 「ちょうちん」 のことだそうです。 ときどき本やネットで、「花の中にホタルを入れて光らせて楽しんだから」 という名前の由来が書かれていることがありますが、それはそれでいいなと思ってしまうほど、いい名前ですよね。

私はこの花が大好きなのですよ。 ホントにかわいい。

姿かたちがかわいらしいホタルブクロ



紫色が実に鮮やか
梅雨の晴れ間にはこのタツナミソウがよく目立ちます。
タツナミは立浪、浮世絵に描かれた波のように盛り上がって、立ち上がって咲く風情をよくとらえたな、と思いますね。

以前書きましたが、私はなぜかシソ科の植物が大好きなので、このタツナミソウも好きな花の一つです。
花の色も形も、花の形も、葉っぱの形も、すべてが好きです。

美しいでしょ?


山を歩いていて、特徴のある大きな木の葉っぱを見つけ、「もしや」 と思って葉っぱの下をのぞいてみたら、やっぱりそうでした、ウリノキの花が咲いていました。

不思議な花です。 なんかこんな金具ありそうでうすよね?
白いのが花びら? 黄色いのはめしべ? おしべ? なんだかよくわからないところがとてもおもしろい。

今年初めて見ました。 だからとてもとてもうれしい(^^)
 

神様のいたずら?



万能薬、という意味で十薬ともいうドクダミ
梅雨時の花は? と聞かれたとしたら、やはりこのドクダミと答えるかな。 この花くらいこの日本の梅雨の時期の環境に似合い、そして適応した植物はほかにないのではないかな?そう思うほどシトシトジトジトとした環境に適した植物ですね。

ドクダミは庭に入り込んできますと、むやみに殖えますし、摘むとむっとする悪臭がありますから、たいていは嫌われていますが、ドクダミ茶として売られているように、私たちにとって役に立つ植物でもあります。

葉っぱに含まれている汁には強い殺菌作用があって、人工的に作られた殺菌剤の数万倍?数十万倍?の効力があるそうですよ。
あせも、かぶれ、虫刺され、キズにとてもよく効くことは私が実証済みです。 においもね、つぶして塗ってしまうと逆にすっとしたいい香りに変わるんですよ。 ぜひお試しあれ。

あ、お茶にする場合は、花が咲いたときに花も一緒に摘んで陰干しにします。 今はもうちょっと遅いかな。


私は変わっているのかもしれませんが、このシシウドの花が咲いた風情が、私には真っ白なクジャクが羽根を広げたように見えるのですよ。 賛同してくださる方はいらっしゃいますかな?

放射線状に伸ばした茎の先に花のかたまりを付け、その花のかたまりもまた丸く放射線状に広がって花を咲かせます。 とても合理的で、合理的なデザインというのは美しいと感じるものだと、私は思うのですよ。 無駄がない、究極の美の一つがここにあると言ってもいいんじゃないかな。

シシはイノシシのことで、つまりとても大きいという意味のとおり、大きいものでは大人の背丈ほどになります。 だからこそいっぱいに咲いた花が白いクジャクのように見えるのですよ。

花火みたいにも見えますね




神奈川県の花、ヤマユリ




さぁ 最後には梅雨の終わりと、そして夏の訪れを告げる花、ヤマユリをご紹介しましょう。

私は世界で一番豪華で美しい花だと思っています。 とにかく信じがたいほどの美しさ、そして脳髄がしびれるくらいの強い芳香、これこそ花の女王と言ってふさわしいのではないでしょうか? 大きな株になりますと10個以上の花をつけます。 自然、天然の花ですよ? 信じられます?

ヤマユリは日本固有の植物です。 私たちの住むこの小さな島国には、このように世界に誇れる美しい植物が自生しているのです。 みんなで大切にして、そしてほこりに思いましょうよ。





さて、最後に涼しげな渓流の画像をご覧いただきましょう。

まだまだ暑い日が続きますが、夏バテや熱中症に気をつけて、このきびしくも美しい夏を楽しんでくださいね。 夏の山はまたいいですよ。 帰るのがイヤになるくらい涼しくて気持ちがいいのです。
みなさんもぜひお出かけくださいね。


梅雨時の山って、ほとんどの人が知らないんじゃないかな。
住んでいる人しか知らない、見ることができない風景がたくさんあります。
自然って、1秒1秒変わりますし、その1秒1秒がすべて生きている、と感じます。
なにもないけれど、これ以上のものはなにも必要ない。
それが自然というものでしょうね。
次回更新は・・・いつにしましょうね。 花の画像がたまったら更新しますね。